廣川政樹 作品
宵の明星
Lucifer
Ⅰ
作品解説
ルシファーは、本来「光をもたらす者」という意味の名で、明けの明星――金星を指す言葉でもありました。古い文脈では、夜明け前の強い光そのものを表す呼び名です。
ところが、この名はキリスト教の解釈の流れの中で性格を変えて行きます。旧約聖書『イザヤ書』には、没落する王を「明けの明星」に喩える箇所があり、その表現が翻訳や読み替えを経て「ルシファー」と結び付けられました。その結果、ルシファーは「天から堕ちた者」として語られるようになり、やがて堕天使、そして悪魔の象徴へと固定されて行きます。
伝承でのルシファーは、最も美しく高位にあった天使です。しかし傲慢や反逆によって堕落し、神に背いた存在として追放されたとされます。理由は、人間を重んじる神への不満とも、自らの力と美に酔った結果とも語られ、物語によって揺れがあります。
堕天後はサタンと同一視されることもあり、堕天使の首領として描かれることもあります。光の天使の姿を纏って人を惑わす存在として知られ、大天使ミカエルとの戦いに敗れて地の底に封じられたという伝説も加わりました。
つまりルシファーは、「光」を名に持ちながら、その光が転じて誘惑や欺きの象徴になるまでの変遷を背負った存在です。高みに居た者が、傲慢によって墜ちて行く。その構図が、ルシファーという名に凝縮されています。
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