廣川政樹 作品
静粛
Quiet
Ⅰ
作品解説
般若心経の後半では、「唱えよ、心は消え、魂は静まり、全ては此処にあり、全てを越えたものなり。悟りはその時叶うだろう。全てはこの真言に成就する」との真言に添えて、心配しなくても大丈夫だと説かれています。
森羅万象、あらゆる生物の進化と営み、人の持つ五感も意識も容易に再現可能であり、物の見え方や聴こえ方も人それぞれです。普遍的な価値基準でさえ、古来より人知れず厳密に統制管理されてきました。ことに時空の特異点においては、あらゆる物理法則が通用せず、たった一つの電子が時間も空間も超えて跳躍し、この宇宙全体を構成することもあり得るのです。三次元空間を包括する余剰次元の立方体も存在可能で、故に「全ては一つである」という東洋神秘思想の教えは今も昔も正しいのでしょう。
ともすると私たちは影に過ぎず、私たちが見ている世界も実体を持たないのかもしれません。全てが無の中にあり、苦しみも辛さも、揺らぎ続ける心も、いい加減な幻に過ぎないのかもしれません。この世はそもそも空しいものですから、時代の移り変わりに抵抗せず、流されるまま生きるのも大切なことです。しかし、誰にも未来は見えず、心に不安を抱えずに生きるのはとても難しいことでしょう。
ただ見えないことを愉しみ、幻の中でも夢や空想や慈悲の心を忘れず、懸命に生きるプロセスこそが尊いのだと思います。この世界がでたらめで嘘ばかりでも、全ての物事を当然のごとく受け止め、自分の中にある恐れも愛してあげてください。全ての人々の心のそばに、涅槃はいつも寄り添っています。
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